40年の取引を経て、
時代の流れを読んだ
パートナーシップへ
株式会社大日商会様
金属マテリアル事業
金属スクラップ事業をメインとする神鋼商事と、パートナーとして取引をしている株式会社大日商会様。取引の内容や現在注目されているSDGsへの取り組み、今後の発展などについて、代表取締役専務の中田昌宏様、平塚工場工場長の森茂人様に、神鋼商事常務取締役の山口一樹と語り合っていただきました。
平塚の地縁からつながった強固なパートナーシップ
中田昌宏(以下、中田):
当社は昭和29年創業なので、今年で68年目となります。大阪に本社があり、その他静岡、平塚の拠点と合わせて従業員は現在150名弱です。
事業内容としては、創業時から一貫して鋼板の加工を行っています。
森茂人(以下、森): 鋼板加工というのは少し詳しく説明しますと、鉄鋼メーカーに厚さ・幅の注文を入れて、鋼板をコイルにした状態で卸してもらいます。それをお客様からご注文頂いた寸法に加工して、出荷しています。その過程で切れ端がスクラップとして出る。それを神鋼さんに買い取っていただいている流れです。毎日100トンほどの鉄を加工し、1カ月ではトータルで80〜90トンほどのスクラップが出ている状況です。
山口一樹(以下、山口) おつきあいとしては、40年ほど前からになりますね。弊社とこちらの平塚工場が非常に近いということで、それぞれが創業者の代にご紹介いただいてからのご縁になります。
中田: 今は毎日スクラップを取りに来てもらってるよね。
森: はい。定期的に来ていただくのと、スポットでスクラップが多く出た際にはご連絡するとすぐご対応してくださる。 無駄なものが工場にあると作業効率も落ちてしまうので、スピーディーに回収していただけるのはとてもありがたいなと感じてます。 あとは価格の透明性ですね。状況が変わった際にはしっかりと情報共有いただけるので、非常に助かっています。
環境のことを考えて大日商会が取り組んできたこと
――昨今、企業も環境問題やSDGsへの取り組みをよりいっそう求められる状況にありますが、大日商会様として取り組まれているものは何かありますか。
中田: 今ちょうど始めよう、というところなんですよね。たたき台を作って、全社で取り組んでいこうとしています。世の中の動きとしてもそうですし、神鋼さんから昨年の年末にSDGsの取り組みを伺って、身近なところでもやっているんだからチャレンジしてみよう、ということで今回取り組み始めましたね。
森: 今考えているのは、鋼板を運ぶ際に使っている木枠のリサイクルや、鋼板をまとめて束ねるために使っている鉄製のバンドのリサイクル。あとは地域の清掃もやっていこうかという案が出ています。
中田: 実はSDGsという話題が出る前から、リサイクルについては積極的に取り組んでいます。KES(環境マネジメントシステム)を取得しているので、 その一環でやっていたことをSDGsの文脈でさらに発信していこうかと考えています。
――具体的にはどのような取り組みがあるのでしょうか。
森: お客様に鋼板を納入する際に使った木枠を全部引き取りをさせていただいて、他のサイズに組み替えるという取り組みは以前から行っています。 木枠を引き取って、木材に刺さっている釘を抜いて、また使えるようにするために専属の社員を1人つけています。それから今後、木枠の端材をリサイクルしていきたいなというのはありますね。今は木材を扱っている業者さんに、お金を払って引き取っていただいている状態なので。
山口: 鉄を載せるので非常に丈夫な木で、密度も高い。これをキャンプ用の薪として再利用していくなど可能性はいくらでもあると思うんですよね。
森: 私たちとしても再利用法は検討したいです。ただ、現状は保管したりするのに場所がなかったりと、問題点はいろいろとあるので、こうやって山口さんに気軽に相談できるのは心強いです。
SDGsの流れからより注目される金属リサイクル
――金属リサイクルそのものがSDGsに貢献している、というところは少なからずありますよね。
中田: それはありますね。金属はリサイクルしやすい素材なので、昔からスクラップが廃棄物ではなく、買取の対象になってましたし。
森: 鉄鉱石から鉄を作る「高炉」から出るCO2の量に比べて、すでに鉄となったものを溶かして作り直す「電炉」から排出されるCO2は4分の1ほどなんです。 なので金属リサイクルをやればやるほど、カーボンニュートラルに近づけるというところはありますね。 いままで高炉で100%鉄鉱石で作っていたものを、1〜2割スクラップにしていこうという動きは実際にあります。
中田: ただ、鉄鉱石以外のものを混ぜると成分が安定しないというところもあって、そこが今後の課題かなと思います。 ただ、技術開発などでどんどんスクラップの比率を高めていく流れになっていくと思いますね。そうなると、ますますスクラップのニーズは高まる。
山口: 実際にスクラップの価格も上昇してますし、ニーズが高まっているなというのは身を持って感じますね。
森: ただ、弊社としては工場を動かすという意味で、いかに効率化していくか、スクラップを減らしていくか、ということも常に模索しています。 神鋼さんから見ると、取扱高が減ってしまうことになりますが。
山口: でもそれは、当たり前の流れだと思うんです。大日さんが効率化をして努力して、さらに営業活動が右肩上がりになれば、作るもの自体が多くなって、 結果的にスクラップが増える。それが一番理想なのかなと思います。 弊社も、5年後、10年後を考えて、現在の鉄のスクラップだけに固執するのではなく、非鉄分野、産業廃棄物分野、新規事業分野などにチャレンジしていかないといけないと思っています。
シュリンクする業界の中で50年後も生き残っていくために
――今後、鉄鋼業界はどうなっていくと思いますか。
中田: 国内マーケットはシュリンクしていくと思います。
山口: シュリンクしていきますよね。
森: 一番大きいのは電気自動車の登場かなと思います。電気自動車にはマフラーがありませんし、従来のような大きなエンジンもなくなる。 それからリモートワークが進み、オフィス家具やロッカーなどの材料としての注文が減りました。
中田: その代わり学校に設置するモバイルロッカーや、宅配ボックスなどのための注文は急激に増えている。 取引先もどんどん変わってきているなと感じます。お客様のニーズが変わっている中で、その変化に素早く対応していけるか、というのが課題ですね。それから我々も属している日本製鉄グループ内の連携をしっかり取って、各社それぞれの強みを活かしていく方向で動こう、という流れになっています。
――これからも取引を続けていく上で、お互いの会社に期待することはありますか。
山口: 僕がいうのもおこがましいですけど、「50年後もがんばっていきましょう」でしょうか。そこに尽きると思うんです。 廃業する会社も増えている中で、10年後も今の体力があったらいけると思うけど、50年後はちょっとわからないなって思うんです。
中田: それは間違いないと思う。
山口: 本当に車がぜんぶ電気自動車になって、そこで手を打たず従来の自動車関係の取引に固執してたら、売上が大幅に減るということになりますよね。 それをいかに先を読んで、変化に対応するか。その結果切磋琢磨して、50年後も頑張っている、とお互いなれればいいなと思ってます。 だから有益な情報があったら、積極的にお伝えしていこうと思いますし。
中田: うちの親父たちを見ていると、長く取引はしていたけどそんなにコミュニケーションは取っている印象はなかったんです。 代が変わって、すごく話しやすく距離も近くなったと思いますし、すごい優秀なビジネスパートナーだと思っています。頼もしいですよ。
山口: ありがとうございます。これからも新しいことにチャレンジしながら、他業種にアンテナを張って、長期的な視点を持って時代の変化に対応していきたいと思います。
中田 昌宏
株式会社大日商会 代表取締役専務
2005年住金物産(現日鉄物産)鉄鋼部に入社。東京、名古屋での営業を経験したのち、2010年より大日商会入社。静岡、平塚の工場長を歴任の後、2020年より専務昇格、2022年より現職。ゴルフは競技ゴルフに出場する腕前。
森 茂人
株式会社大日商会 平塚工場工場長
2000年大日商会入社。静岡工場にて勤務し、2012年より静岡工場営業課課長。2020年より現職。現在は単身赴任中。
山口 一樹
神鋼商事株式会社 常務取締役
2008年マザーズ上場のITベンチャー企業に入社。法人携帯の販売、モバイル広告販売、新規事業開発などを経て2011年神鋼商事入社、2012年取締役就任。2013年に青山学院ビジネススクールに入学し、MBAを取得。2017年より現職。
文 : 藤井みさ 写真、編集 :平藤篤(MULTiPLE Inc.)
公開日:2022年4月19日
※内容、所属、役職等は公開時のものです
※取材は新型コロナ感染防止対策を行なったうえで実施しています